英文読解に必要な背景知識について【SATリーディング】

  • 2022年10月22日
  • 2022年10月24日
  • 英語

最近高校生にSATの英語(Reading と Writing& Language )を指導しています。

指導して気づいたのは、主に文法問題を扱うWriting & Language のパートは、日本でしっかり英語教育を受け、難関大入試レベルの英文法をマスターしている子にとっては、そう難しくないということです。

一方で、Readingの文学作品を題材とする問題は、英検やTOEFLなどの問題に比べると難しく感じるかもしれません。

理由としては、日本の英語教育では、文学作品をあまり取り扱わないので読み慣れていないのと、背景知識を知らないが故に内容が理解しにくいからです。

 

利用したSATテキスト

SAT指導には下のテキストを利用しました。

このテキストは、2013年に発行されたもので、現在のSAT(2016〜)特有の問題には対応していません。

さらに、レビューをみると、「パッセージの量が少ない。簡単すぎる」という否定的な書き込みもあります。

なぜ、私が古いタイプのこのテキストを使用したかというと、 来年度(2023年)から始まる新しいDigital SATは、現在のSATと比べてパッセージの長さがかなり短くなり、さらに現在のSAT特有の問題も(恐らく)なくなるからです。

ちなみにこのテキストは、中学から英語を始めた生徒さん向けに使っています。

中高で帰国生向けの英語のクラスをとっている子には、易しい内容となるかもしれません。

 

リーディングにおける背景知識の大切さ – 歴史的事実

2つの例題をとりあげて、フィクション作品の読解問題における背景知識の大切さについて述べたいと思います。

一つ目の題材は、孫娘とその父親が、祖母からアメリカに移住してきた時の体験を聞くストーリー。

このパッセージでは、最初の段落で、登場人物である、Nana、Papaと主人公の私がでてきます。

そして、3人がEllis Islandを訪れていることがわかります。

 

この段落で、Ellis Islandがキーワードとなります。

Ellis Island(エリス島)はかつて移民局が置かれていた場所であり、多くの移民がエリス島を通過してアメリカへ入国しました。

その事実を知っていれば(おそらくアメリカ人のほとんどがそのことを知っている)、登場人物のおばあちゃんが、幼き頃移民としてこの島を訪れたのだろうということが予測でき、その後のストーリーの流れもわかりやすくなります。

その事実を知らない場合は、よく状況がわからないまま話を読み進めることになります。

また、「Nana =おばあちゃん」がわからないと、さらにちんぷんかんぷんかもしれません。

(英語圏では、地域にもよるかもしれませんが、おばあちゃんのことをNanaと言います。)

 

もちろん、上のような背景知識がなくても、問題は解けるし、読み進めるうちに状況がわかってくるとは思いますが、知ってるか知らないかで理解度&理解のスピードが変わります。

 

リーディングにおける背景知識の大切さ – 読書経験

2つ目は、馬が主人公(ナレーター)となっているパッセージです。

馬がナレーターとは、変わったストーリーだなぁと思いながら読み進めました。

読んでいるうちに Black Beautyという言葉がでてきて、このパッセージが小説「Black beauty」から抜粋されたものだと気づきました。

 

Black beautyを知らなくても問題は解けますが、知っている人は、話の流れがわかっているわけですから、もっと簡単に解けるだろうと思います。

私はBlack beauty という本の存在は知っていましたが、詳しく内容を知らなかったので、あとでネットで内容確認したのですが、「なるほど〜そういうわけか! 」と疑問点が解決しました。

パッセージは、小説の一部を抜粋しているので、そこだけでは全体的な流れがわかりにくかったのです。

Black beautyは何度も映画化されていますし、多くの英語圏で育った子が知っているストーリーだと思います。

知らないと不利になりますね。

 

最後に

私は以前、論理力を測る英語の問題を作問していましたが、その際気をつけていたのは、背景知識の有無によって難易度が変わるような問題にならないようにする事でした。

そのテストで測りたいのは、背景知識ではなく、論理力だっただからです。

そういう面では、現SATの文学読解問題は、背景知識(特に文化面)が重要となる題材が選ばれているなぁと感じました。

ちなみに、文学の問題では、日本の文化が題材となるケースもあります。

そういう問題は日本人にとってはラッキーですね^^

 

来年から始まるDigital SATでは、パッセージが短くなり、ストーリーを追う必要がないので、背景知識は今ほど必要でなくなるのではないかと思います。

インターナショナル生にとってはより解きやすいテストとなりそうです。

(英語が得意な帰国生にとっては、周りとの差がつきにくくなり、その点ではデメリットになるかも!?)