私はアメリカンドラマを観るのが趣味なのですが、その中でも弁護士もの、法廷ものはハズレが少ないのでよく観ます。
「アリー・マイラブ」「グッドワイフ」「私はラブリーガル」など、女性が主役のものがお気に入りです。
なので、2022年8月26日にNetflixで初公開された、「パートナートラック」はもちろん要チェック!
あっという間に見終わりました。
シーズン2が待ちきれません。
今回の記事では、「パートナートラック」の概要を紹介すると共に、ドラマの中で使わたWhite fragilityという言葉について説明します。
Netflix ドラマ「パートナートラック」のあらすじ
主人公の韓国系アメリカ人1世のイングリッドは、マンハッタンにある、保守的なエリート法律事務所で働くシニアアソシエイト。
女性である事、そしてアジア人である事は弁護士として働く上で時にはマイナスにもなるのですが、そんな環境の中で、イングリッドはパートナーへ昇進するために日々奮闘しています。
このシリーズは、恋愛、友情、家族などをテーマにしつつ、白人、男性優位の保守的な弁護士事務所で、女性や有色人種、LGBTの人々が直面する「差別」についても取り上げています。
ストーリーの基となるのは、中国系アメリカ人の元弁護士、ヘレン・ワンの著書『The Partner Track』です。
White fragilityとは
ドラマでは、事務所内で、アフリカ系アメリカ人のタイラーと、コケージャンのダンが口論する場面があります。
白人であるダンが黒人のゲイであるタイラーに対して次のような発言をしたのです。
You’re black with an added gay bonus.
Your success is pretty much guaranteed.君は黒人でしかもゲイだ。君の成功はほぼ保証されているね。
その発言を受けて、タイラーは次のように言います。
That is all kinds of racist.
典型的なレイシストだな。(netflix 字幕)
レイシストといわれたダンは、
「俺はレイシストではない。」
「ちょっと敏感すぎないか?」
「白人だって生きるのは楽じゃないんだ。」
と反論します。
それに対してタイラーは、
Okay. I can’t deal with your white fragility
白人ならではの弱みには触れないでおこう。(netflix 字幕)
と答えます。
このwhite fragilityという言葉ですが、2011年にアメリカの社会学者であるロビン・J・ディアンジェロが作りだした造語です。
2018年には彼女の研究をまとめた本「White Fragility: Why It’s So Hard for White People to Talk About Racism 」が出版されました。
日本語版「ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?」もあります。
出版社からのコメントでは、white fragilityの意味を次のようにまとめています。
タイトルにあるWhite Fragility (白人の心の脆さ)とは、白人たちが人種問題に向き合えないその脆さを表現する言葉として、2011年に著者が作り出した造語である。日頃、自らの人種(白人性)について考えることが苦手な白人は、人種をめぐる小さなストレスを受けただけで耐えられなくなる。例えば、ベージュのクレヨンを「肌色」と呼ぶのは不適切ではないか、といった些細な指摘にも、白人は動揺する。そして、白人は様々な自己防衛的な行動―早口で抗弁する、沈黙する、話題から逃げる、泣くなど―をとり、人種ヒエラルキーの優位にたつ白人として心の平穏さを取り戻そうとする。その人種問題への向き合い難さを、この言葉は表している(第XI章「白人女性の涙」は典型)
監訳者解説(貴堂嘉之)より一部抜粋
この説明で書かれている白人の反応は、タイラーの指摘に対するダンの反応そのものでした。
マイクロアグレッションとは
ダンは自分がレイシストという意識はなかったようですが、
●マイノリティの同僚のランチが臭うといったり
●二人のラテン系のパラリーガルの名前を混ぜこぜにしたり
していたことをタイラーに指摘されます。
自分ではそのつもりはないのでしょうが、自分とは違うバックグラウンドをもつ人に対しての偏見、差別、無理解からくる言動であり、相手を傷つけける可能性があります。
このような言動はマイクロアグレッションと言われます。
ドラマ中では、マクロアグレッションの例として、「(企業の)情報を公開する」という意味で使われる”Open the kimono”という表現もネタになっていました。
着物を開く→(中身が見える)→情報を公開する
というイメージです。
あまり深く考えずに使っている人も多いかと思いますが、日本人としてはいい気持ちはしませんよね。
白人だけの問題ではなく
White fragilityは、白人だけの問題ではなく、私たち日本人も問題意識を持つべきだと思います。
例えば、
「○○産(○○には国名が入る)の製品は良くないよね。」
「ハーフだから可愛いね」
「女性なのに(男性なのに)〇〇できてすごいですね。」
などと、私たち日本人も、自分では気づかずに、偏見、無理解、差別に基づいて相手を傷つけている言動、マイクロアグレッションをしている事があります。
そして、それを指摘され時に、言い訳をしたり、反論したり、逆ギレしたりなど過剰に反応する事もあります。
「ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?」の監訳者である貴堂嘉之氏は次のようにおっしゃっています。
白人の読者向けに書かれた本書は、日本人の読者に対しても見えないレイシズムを可視化する役割を期待できるのではないか
この本、ぜひ読んでみたいと思います。
きっかけをくれた「パートナートラック」ありがとう!