去年に引き続き、英語共通テストの事実と意見を見極める問題の分析をしてみました。
事実と意見を見極めることは、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングをする上で重要となるスキルです。
アメリカの小学校では、低学年のうちから事実と意見を区別することを学びます。
日本の学校でも事実と意見の違いをもっと指導すればよいのに・・・と常日頃思っていたので、去年の共通テストから「事実と意見を区別する設問」が出題されることになったのは喜ばしいことだと思いまいた。
しかし、2021年度の共通テスト、2018年に行われた試行調査における「事実と意見を区別する設問」を見たところ、出題ミスとも言える問題が続出していました。
それでも、2018年の試行調査よりも2021年度の共通テストの問題はよくなっていたので、今後改善されていくだろうと思っていたのですが、今年(2022年度)の問題は去年よりも質が悪くなっており残念です。
今回の記事では、2022年度の事実と意見を見極める問題の分析します。
(この記事の著者である私は、TESOL(英語教授法)の修士号をもっており、事実と意見の見極めが重要となる思考力テスト(英語)の作問をしていた経験があります。)
まずは以前書いた記事を紹介します。
今年行われた第一回目の大学入学共通テスト(英語)で、去年までのセンターテストでは出題されなかった「事 […]…
先日、初めての「大学入学共通テスト」が行われました。 英語(リーディング)に関しては、去年までセンタ […]…
事実と意見を区別する問題数は減少
2021年度の共通テストでは、事実と意見を区別する設問は4問出題されましたが、2022年度では1問しか出題されていません。
問題文&設問は以下の通りです。
問5がfactを見極める設問となっています。
necessaryやneed toを使った表現は fact?それともopinion?
問5 One fact stated by a previous student is that
① headphones or earphones are necessary when watching videos
② the library is open until 9 pm
③ the library orientation handouts are wonderful
④ the Study Area is often empty
上の①〜④のうち、事実(fact)なのは②番です。
しかし、②番の内容は a previous studentのコメントに含まれていません。
①、③、④は緑の線を引いた部分が、話しての判断に基づいています。
つまり、どれも意見(opinion)です。
内容面をみてみると、③と④は本文の「Comments from Past Students」に書いてある内容と一致しません。
なので、答えは①ということになるのだと思いますが、それだと、この設問は「事実と意見を区別することができるか?」ではなく、「本文の内容を読み取れているかどうか?」をはかる問題となります。
問5は事実と意見を区別させる設問とは言えないということです。
本文中の生徒のコメントにある、When watching videos, you need to use your own earphones or headphones. や
設問の、Headphones or earphones are necessary when watching videos. は、
need to やnecessaryが話し手の判断となり、「意見(opinion)」となるわけですが、その判断の根拠が、主観的なもの(みなの迷惑になるから等)なのか客観的なもの(そういうルールがあるから 等)なのかはわかりません。
もし、客観的な根拠があり、「事実」として伝えたい場合は、
「ビデオを見る時はヘッドフォンやイアフォンをつける必要があるというルールがあります。」
という言い方をする必要があります。
(「ルールがある」=事実 となります。)
fact or opinion の設問例
私が作問するならば、問5の選択肢は次のようにします。
One fact stated by a previous student is that
① headphones or earphones are necessary when watching videos
② the library orientation are wonderful
③ study area is often crowded.
④ on the ground floor, there are photocopiers next to the TVs.
①〜④の内容はすべて「Comments from Past Students」に書いてある内容と一致します。
その上で、事実の文を選びます。
答えは④です。
ルールの伝え方 アメリカの学校の場合
今回の問題をみて、アメリカの現地校での出来事を思い出しました。
我が家の子供達が通っていた小学校では、学校の規則が書かれているcode of conduct(行動規範)があり、学年の初めにそれを親子で読み、その規則を守るというサインをする必要がありました。
学校で生徒が規則違反をした場合は、先生方は、
「〇〇すべきです。」「〇〇する必要がありますよ」という代わりに、
「code of conductに反した行動をしていますよ」と注意していました。
「〜すべき(should)」や〜、今回の問題ででてきた「〜する必要がある(need to)」という表現は「意見」なので、そういう注意の仕方をすれば、「それはあなたの意見ですよね。私はそう思いません」と言われかねないからです。
一方、「あなたの行動はcode of conductに反しています」という表現は「事実」なので反論できません。
最後に
今回、もう一問「事実と意見を区別すること」を意識して作られたのかと思われる問いもありました。
第二問Bの問4 Which best summaries David’s opinion about having pets in Japan. です。
①〜④の選択肢はすべてopinionとなっていました。
ある予備校の分析では、「2022年度の事実と意見を区別する設問は2問だった」とのことだったので、その場合、上の問いもfact or opinionの設問としてカウントされているのでしょう。
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