帰国子女やおうち英語で育ったバイリンガル達は、私たちが日本語の語彙を学ぶように、自然に英語の語彙を習得していきます。
でも年齢が上がるにつれ、自然に身につけるだけでは十分な語彙が身につかない場合もあります。
今回の記事では、バイリンガルが英語の語彙力を高めていくために必要なことについて書きます。
2つの語彙学習法:間接的語彙学習と直接的語彙学習
語彙の学習には、Indirect vocabulary learning(間接的語彙学習)とDirect vocabulary learning (直接的語彙学習)の2つの方法があります。
間接的語彙学習は、会話、聞く事、読む事などを通して語彙を学習する方法です。
親子の会話、テレビやDVDの視聴、本の読み聞かせ、自分で本を読む事などから語彙を習得します。
直接的語彙学習は、語彙に焦点をあて、集中して、体系的に学習する方法です。
フラッシュカードや単語帳、語彙ワークを利用して語彙を学ぶやり方です。
間接的語彙学習の問題点
我が家のバイリンガルの子供達の場合、主に間接的語彙学習によって語彙を身に付けました。
本や動画からの語彙習得です。
自然に無理なく語彙習得ができる、子供に負担のない方法ではありますが、間接的語彙学習には問題点があります。
例えば多読の場合、コンテクスト(文脈)から知らない単語の意味を推測する中で、単語を自然に身に付けることができますが、それには膨大な読書量が必要となります。
読書によって、ある単語を定着させるためには、 6 回 から10回以上その単語を目にする必要があると言われています。
(Saragi, Nation, and Meister, 1978; Rott, 1999; Jenkins, Stein, and Wysocki, 1984)
また、意味を推測する力には個人差があり、推測するのが苦手な子もいると思います。
間違った意味を推測してしまう場合も十分にありえるでしょう。
子どもが小さいうちは間接的学習だけでも十分だと思いますが、ある程度大きくなると(小学2年生以上くらい)、学年相当の語彙レベルを身につけるには、間接的学習だけでは十分でなく、直接的学習も取り入れたほうがよいと言われています。
語彙ワークなどもちゃんとやったほうがいい、ということです。
というわけで、語彙ワークについて掘り下げていきます。
語彙ワークブック Wordly Wise
語彙ワークは様々な種類のものがあります。
まず、アメリカの小学校で使用される事もあるwordly wiseを紹介します。
語彙ワークはそれぞれ特徴がありますが、Wordly Wiseの特徴は、「語彙の意味」に焦点を当てているところ。
Wordly Wise は1つのレッスンで、10〜15個の単語を学びます。
1レッスンには5つのパートがあるのですが、どれも言葉の意味を理解していないと解けない問題です。
5種類の違うタイプの問題をすることによって、そのレッスンで学ぶ単語を定着させることができます。
最後のパートは長文問題です。
長文問題の場合、文脈から答えを導きだすので、間接的語彙学習ではないか?という疑問がでてくると思いますが、文脈に基づく問題でも、メッセージに焦点を当てると間接的語彙学習、言語に焦点を当てると直接的語彙学習です。
Wordly Wiseの長文問題の場合、そのレッスンで習った単語に焦点を当てているので、直接的語彙学習ということになります。
その他の語彙ワークブック
他の語彙ワークに関して少し述べたいと思います。
例えば上で紹介したSpelling and Vocabulary の場合、フォニックス的観点から語彙を学びます。
sound, spelling pattern, syllable pattern, word structureから単語を分類・分析する問題があります。
(もちろん単語の意味を問う問題もあります)。
こういうフォニックス的観点から語彙を学ぶ事も大切ですね。
特に低学年の子には必要です。
実際、うちの子ども達が通っていたアメリカの現地校では、Wordly wiseを使用し始めたのは4年生からでした。
それまで使っていた語彙ワークはフォニックス的観点から語彙を学ぶものでした。
教室言語とWordly Wise
4年生からWordly Wise を使いだしたのには、それなりの理由があると思います。
Wordly Wiseの解説を見てみると、book3(3年生用)までにはなく、book4(4年生用)から記載されていることがあります。
それはSchool languageについてです。
Wordly wiseでは、School Language について次のように説明しています。
School language は小説や、教科書、テストなどで使われている言葉で、私たちが勉強する際に必要となる言葉です。
これらの言葉は普段の日常生活ではあまり使われません。
だから、直接的学習で学ぶ必要があります。
Wordly wiseで学習すると、School languageを習得することができます。
このSchool languageは、日本語で、教室言語や学習言語と呼ばれているものです。
教室言語とは、抽象的で、概念の把握、判断、解釈を伴うため、思考力を要する高度な言語です。
抽象的思考への移行期である9歳前後から、抽象的思考に必要な「教室言語」を定着させるため、語彙の意味の定着に焦点を当てたWordly Wiseを使用するのは理にかなっていると思います。
もちろん、読書(間接的語彙学習)からも、教室言語は学べますが、語彙ワークを利用したほうがより効果的です。
Wordly Wiseを使うときの注意点
Wordly wiseには時々、正しい答えがどれなのかわからない問題があります。
例えば下の(4)の問題。
Which of the following usually learn obedience?
(a) dogs (b) cats (c)soldiers (d) children
この問題、解釈の仕方は人それぞれですよね。
(解答がないので、正解はわかりません。)、
子どもは従順さを学ぶことができますか??
そういう子もいるだろうなぁとは思いますが、そうじゃない子もいます。
犬はたいてい従順なイメージだけど、私が小さい頃に飼っていたビーグルはあまり従順ではなかったなぁ^^;
次に(3)の問題。
Which of the following could distract someone?
(a) loud noises (b) dreams (c) whispering (d) the radio
これの問題も人によりけりですよね。
私にとっては、(a)と(d)です。
うちの子は、(a)(d)と共に、(c)whisperingにも丸をつけていたので理由を聞いてみたところ、「耳元でささやかれるとうざいから」とのことでした。
確かにそう感じる人もいるかも。
そして、(5)の問題。
Which of the following must be alert?
(a) a watchman (b) a driver (c) a babysitter (d) a pilot
うちの子はすべてに丸をつけていました。
このように、解釈によって答えが違ってくる問いがあります。
なので、正解・不正解にとらわれずに、選択肢を選んだ理由を聞いてみて、それが納得のいくものだったらそれでよし、としてよいと思います。
まとめ
今回の記事では、語彙の学習法として、間接的語彙学習と直接的語彙学習について説明しました。
この2つの学習法は、どちらが良いとか、優れているとかいうわけではありません。
お互い補完的に用いることで、より効果的な語彙学習ができます。