我が家の子供たちは二人ともバイリンガルに育っています。
バイリンガリズムには様々な考え方があり、どの節を信じるかによって、捉え方が変わってきます。
今回の記事では、代表的なバイリンガリズムの考え方を紹介するとともに、バイリンガルの特徴であるtranslanguaging(言語交差使用)について説明します。
バイリンガルの捉え方
まず最初に、translanguagingと比較するために、代表的なバイリンガリズムの考え方を紹介します。(認知面について)
図で説明しますが、ささっと書いたので、雑ですみません。
L=言語システム
F=言語の特徴
L1=第一言語システム
L2=第二言語システム
です。
伝統的なバイリンガリズム
この説では「脳内に第一言語システムと第二言語システムが別々に存在している」と考えられていました。
この説が信じられていたころは、バイリンガルの難点が注目され、「2言語を同時に習得するのは無理だ」などのバイリンガルに対しての否定的な意見が目立ちました。
カミンズのモデル
これは言語学者カミンズの説で、「第一言語と第二言語は相互に依存しあっている」と考えられています。
この説では、2つの言語にはCommon underlying proficiency (共有基底言語能力)があり、1つの言語の能力はもう1つの言語に転移できるとしています。
私は子供たちのバイリンガル教育においては、この説を支持し、子供達をサポートしました。
Translanguaging (言語交差使用)
これは、2つ以上の言語が交差する状態を肯定的に捉える考え方です。
ttranslanguaging とは、第一言語システムと第二言語システムがそれぞれに独立しているという考え方ではなく、第一言語と第二言語の垣根がなく、2言語が交差していると考えられています。
コードスイッチング(言語が入り混ざる状態)については、聞いた事がある方が多いかと思います。
コードスィッチングどこが違うのかというと、もともとコードスイッチングは、伝統的なバイリンガリズムからきた考え方なのです。
つまり、独立している2つの言語システムが交差している状態という意味であり、否定的に捉えられる事もあります。
しかし、translanguaing の場合、言語システムは1つで、その中に2つ以上の言語リソースがあるという考え方なので、言語が交差している状態を肯定的に捉えています。
translanguaging (言語交差使用)は第1言語、第2言語ともに、教科を学ぶのに十分な言語力を身につけている人にみられる特徴です。
なので、英語、日本語ともにまだ発展途上の幼児には当てはまりません。
It must initially be stated that translanguaing is only relevant when a student has a sufficiently developed L1 and L2 to use those language for curriculum content learning.
(P.82 Continua of Biliteracy: An Ecological Framework for Educational Policy, Research, and practice in Multilingual Settings )
Translanguagingを活用する
translanguagingという考え方は、もともと英語とウェールズ語が公用語であるウェールズ地方で生まれました。
translanguaging を活用することにより、効果的に2言語を学べると言われています。
具体的にどうやってtranslanguagingを活用するかというと、1つの例としては、インプット(リスニング or リーディング)とアウトプット(ライティング or スピーキング)の 言語をわけるそうです。
例えば、我が家の場合。
子供達が小学生のころ、次のような取り組みをしていました。
*英語の本を読んで日本語の読書感想文を書く
→インプット(英語)、アウトプット(日本語)
*英語でリサーチして日本語でレポートを書く
→ インプット(英語)、アウトプット (日本語)
こうやって2言語を活用することにより、
*学習の理解が深まる
*弱いほうの言語の発達を促す
という利点があるようです。
バイリンガル教育研究の権威である中島和子さんも、
「2言語をリソースとして使うことはバイリンガルが日常実践していることであり、それを容認して、 両言語の活用を奨励することが、高度のバイリテラル育成に繋がるのではない かと考えられます。」
とおっしゃっています。
最後に
バイリンガルに対する捉え方はいろいろあります。
言語が交差する状態をよくないと考える人もいます。
実際、私も昔は交差しない状態の方が好ましいのではないかと考えていました。
でも自分の子ども達がバイリンガルになるにつれ、日常的に言語交差が見られるようになり、言語交差を肯定し、フルに利用するようになりました。
最後にバイリンガル教育を理解する上で参考になる本を紹介します。
この本ではカミンズ の理論についての説明があります。
(translanguagingに関してはあまり触れていません。)