ここ数年、お子さんが小さいうちから英語を習わせる、または家庭で英語育児を取り入れるご家庭が増えてきています。
小い頃から英語に触れさせる事で、日本人が苦手とする「話す力」を身につけて欲しいと願う方も多いのではないしょうか?
でも、理解できる単語やフレーズは増えたけどなかなか英語での発話がない・・・。
短いフレーズは使う事ができるようになったけど、長い文で自分の意見を言えない・・・。
などの、「思ったよりも話せるようになっていない」というお悩みをよく聞きます。
今回は、第二言語習得の5つのステージを紹介します。
お子さんの現状を知り、次のステージに移るためにはどのくらい時間がかかるのか、どのくらい語彙を増やす必要があるのかがわかると、不安が減り、対策が立てやすいのではないかと思います。
第二言語習得の5つのステージとは
1 Preproduction (発話なしの時期)
まず最初は、発話のないのステージです。
個人差はありますが、 このステージは数時間から6ヶ月ほどかかると言われています。
理解できる単語が約500語ある状態です。
発話はほぼありませんが、言ったことをリピートしたり、YesやNoと頷いたりします。
子どもが親の転勤などで突然言語の違う学校に通うことになった場合、最初は全く何も話さない時期があると言われます。
それがこのステージ1です。(サイレントピリオドとも言いますね)
私も、子供たちをアメリカの現地校に通わせる前に、経験者の方から、「現地校に通い始めてから数週間から長い子だと10ヶ月ほど全く話さない時期があるよ」というお話を聞きました。
発話がないながらも、精一杯学んでいる状態なので、この時期は 発話を強要しないようにしましょう。
2 Early Production (発話初期)
ステージ2では、発話が少しでてきます。
この時期は約6ヶ月続き、ステージ1から計算するとトータルで6ヶ月ー1年の頃です。
理解できる単語と使える単語が合わせて約1000語あります。
1、2語の発話、馴染みのフレーズを使う、現在形で話すという特徴があります。
3 Speech Emergence (発話の出現)
ステージ3になると英語での簡単な会話ができるようになります。
英語を習い始めてから1ー3年の時期で、使える単語が約3000語になります。
理解度が高まり、3語以上の単語を使った文や短いフレーズを使います。
とはいえ、まだ文法や発音のミスがある状態です。
うちの子供達はアメリカの現地校にキンダー(年長)から通い始めましたが、ちょうどキンダーの後半がこの状態でした。
4 Intermediate Fluency (中程度の流暢さ)
ステージ4では、より複雑な文を話し始めます。
英語学習を始めてから3−5年の時期で、語彙数は約6000語です。
この時期になると、素晴らしい理解力が身につき、自分の意見を言えるようになります。
また英語で考え始めるようになり、文法のミスはほとんど無くなります。
5 Advanced Fluency (高度な流暢さ)
最後、ステージ5になるとネイティブと同程度の話す力がつきます。
ここまで来るのにトータルで5−7年かかります。
参考図書:
Classroom Instruction That Works with English Language Learners Facilitator’s Guide
Chapter 2. The Stages of Second Language Acquisition
参考語彙数(ネイティブの場合)
- 2 years: 300 words
- 2.5 years: 450 words
- 3 years: 1000 words
- 4 years: 2000 words
- 5 years: 5000 plus words
(Munro and McGregor, 2017)
補足
各ステージにかかる期間は、1日に英語に触れる時間やお子さんの年齢によって変わってくるので、あくまで参考程度に留めてください。
アウトプットの必要性
英語が話せるようになるために必要な語彙数、時間について書きましたが、日本のように英語を話す必要性がない社会に住んでいる場合、英語に接する時間をかけ、語彙を増やしても話せるようになるとは限りません。
英語が話せるようになるためには、 アウトプットの場=実際に英語を話す機会が必要となります。
話す必要がない状況だと、聞いてわかるための能力は身につきますが、話す能力は発達しないのです。
自分が知っている知識(単語、文法など)を取り出して、それをうまく順番につなげて文を作れるようになるためには、話す練習が効果的です。
なので、お子さんの話す力を高めるには、英語関係のイベントに連れて行ったり、オンライン英会話を利用したり、育児に英語を取り入れたりと、英語を話す必要がある場を作ってあげる事が大切です。
「せっかく英語のイベントに連れて行ったけど、うちの子は全く話さないので意味がないです。」という声を時々聞きますが、例え話さなくても、そういう場にいれば、頭の中で言葉を考えている場合もあります。
これは頭の中でしゃべっている(リハーサルしている)状態で、脳の働きとしては、実際に口に出して話しているのと同じような活動をしているとも言われるので、無駄ではありません。
最後に
今回、英語を話すようになるまでの5つのステージとアウトプットの必要性について書きました。
理論的には、英語での良質なインプットを与え、アウトプットの機会を与えれば、英語を話せるようになります。
ただ、日本で普通に生活している限り、それでもなかなか話す力が伸びないこともあります。
日本にいると、本当の意味で英語が必要な場はあまりないからです。
なので、頑張っているけどなかなか英語で話す力が伸びない・・・と悩んでいる場合は、
「いつか、お子さんが大きくなって、海外留学や仕事などで、英語が必要な状況ができた時に話せるようになればOK」
と、長い目で見ることも大切かと思います。
(もちろん、インプットやアウトプットの質を見直すことも大切です!)