帰国子女の英語保持に必要なこと

帰国子女 英語保持

うちの子供達は幼少期を5年間アメリカで過ごした帰国子女です。

長男が10歳、次男が7歳の時に帰国し、現在、帰国後約5年半が過ぎました。

帰国子女の親として、「せっかく海外で身についた英語(言語)を帰国後も保持、できれば伸長させて上げたい。」という思いを持っている方も多いことと思います。

私もその思いを胸に、帰国後子供たちにできる限りの英語の環境を与えてきました。

そのおかげもあり、子供たちは二人ともバイリンガルに育っています。

この記事では、私が帰国後の子供達の英語教育を考える際に参考した本のレビューをします。

 


著者の服部孝彦さんは、自らも帰国子女であり、現在海外子女教育復興財団の外国語保持教室のアドバイザーを務めていらっしゃいます。

この本は、第二言語習得と喪失のメカニズムについて、詳しく、そしてわかりやすく書かれています。

帰国子女の親にとって、(または日本で子どもに小さい頃から英語を学ばせている親にとって)、知っておいた方がよい、役に立つ情報がいくつかあったのでそれらをまとめます。

 

帰国したら単語の忘却が始まる!?

 

帰国した年齢、習得した英語のレベルにより違いはあるが、子どもの場合、帰国したときから単語の忘却は始まる。

トミヤマという言語学者が日本の帰国子女の言語忘却について、帰国後4年間にわたって調べたところ、8歳で帰国した調査対象の子どもは、帰国後6ヶ月を過ぎたころから忘却が謙虚になったものの、帰国後4年がすぎても、英語を聞く力とある程度の話す力を保持していた。

英単語を忘れてしまったとしても、その単語の知識を完全に失ってしまうのではなく、その知識を引き出すための検索がうまくいかなくなっているだけ。

頭のなかの単語に頻繁にアクセスする機会を作る事で、単語の忘却は防ぐことができる。

 

うちの次男は8歳になる直前に帰国しました。

顕著な単語忘却が見受けられなかったのは、毎日の読書や、週に一度書いているエッセイ(週に一度通っていた英語スクールの宿題)のおかげで、頭の中の単語にアクセスする機会が頻繁にあったからかもしれません。

 

聞く力と読む力でインプットに励もう!

 

☆聞く力、読む力は受動的な能力で、話す力、書く力は能動的な能力。

☆今までの言語喪失に関する研究によると、能動的能力のほうが受動的能力に比べて早く衰える。

☆衰えにくい「聞く力」「読む力」を大いに活用して、なるべくたくさんの英語をインプットする機会を作ることが大切である。

☆帰国後のインプットの最良の方法は読書。

☆衰えの早い「書く力」は毎日ジャーナルをつけることである程度保持できる。

 

我が家は、「読む力」に関しては読書を、「聞く力」に関してはyou tube視聴やドラマ鑑賞を、帰国後ほぼ毎日しています。

ジャーナルは、うちはやらせたことがないです。

ライティングは英語スクールの宿題のみでした。

 

服部さんは、

「子どもの英語保持のためには、親の力添えはとても重要です。しかし、頑張りすぎると逆効果になってしまいます」

とおっしゃっています。

やっぱり「がんばらないバイリンガル育児」のスタンスが大切かなぁと思います。

 

高度なレベルの英語力が身についていれば、英語力は衰えない!?

 

ある一定のレベル以上の英語力を身につけてから帰国すると、帰国後もそう簡単には英語を忘れない。

この考え方は「臨界閾仮説」といわれ、ひとくちにいえば、「第二言語習得の習得度において、いったんある決定的な地点を超えると忘れにくくなる」ということです。

それでは、いったい、どのレベルまで達すれば英語が忘れにくくなるのでしょうか?

具体的には、アメリカの国際研修機関、Foreign Service Instituteが作成した能力測定テストで「レベル3」以上の習熟が必要だという結果がクラークとジョルデンという研究者達によって示されています。

FSIスケールによる「レベル3」とは語彙や文法がかなり正確に身に付いているだけでなく、社会言語的能力もある程度含まれる高度な英語力とのことです。

 

TOEICでいうと、900点くらいが「レベル3」になるようです。

今までの研究から、レベル3の習得度は小学校低学年までの英語力ではない、ということがいえるそうです。

それでは幼稚園や小学校低学年で帰国した場合、どのようにして英語保持をすればよいのでしょう?

 

読み書きを通して文法力を養おう!

 

幼稚園や低学年で帰国した場合、英語での日常会話は問題ないが、文法的な知識は十分とは言えない。

しかも会話の流暢さや語彙力は、帰国後みるみる衰えてしまう。

一方流暢さや語彙力に比べると、文法力はそう簡単には衰えない。

以上のことから、低学年で帰国した子供たちが英語力を保持するためには、読み書きの学習と通して英文法を養っていくことが効果的な方法だと言える。

 

この本には帰国子女の英語保持の体験談が7例紹介されていたのですが、帰国後、子どもを「公文」に通わせているご家庭の例が2件もあったのが意外でした。

私には帰国子女と公文は結びつかなくて^^;

服部先生は公文での英語学習に好意的でした。

公文では、読み書きの言語活動を通して、新たな英語学習ができるとのこと。

なるほど~。

文法も学べそうですよね。

 

 

まとめると、帰国子女の英語保持には、読む力と聞く力を利用してインプットをする事により英語力を保持しつつ、読み書きを通して文法力を養っていくことが大切だということですね。