Twitter で流行っているという、タワマン文学なるものを読んでみました。
タワマン文学とは、タワマンに住む、一般的には「勝ち組」とされる人達の葛藤や焦燥を描くtwitter発の文学とのこと。
「息が詰まるようなこの場所で」はタワマン文学の先駆者である窓際三等兵さんのデビュー作です。
コンプを拗らせる大人たち
第一章を読んでみて、ある一定の層に刺さるキーワードが羅列してあり、その層にいる人たちには共感できる部分があるストーリーかなぁと思った。
その世界にいなくても、高層階 vs 低層界、サラリーマン vs 資産家 vs 地権者、こどもの中学受験などを面白おかしく描いているので、まぁまぁ楽しめるのかも。
我が家は、よく週末に家族で夕飯を食べながらゆっくり会話を楽しんだり、時には議論をしたりするのですが、先週末は「タワマン文学」が話題にあがりました。
現在某国で大学生をしている長男もzoomで参加。
私と長男が「息が詰まるようなこの場所で」を読んだのですが、
主人公たち、コンプを拗らせてるよね。
自分軸で生きて、自分なりの幸せをみつければよいのに。
いつも人と比べて、他人軸で生きているからマウンティングするのだろうね。
マウンティングのポイントが全然理解できない。
という感想を二人で言い合いました。
くだらないことでのマウンティングを批判する私と長男の話を聞いて、次男が、
「”Let’s see Paul Allen’s card” だね」
と言いました。
Let’s see Paul Allen’s card とは
”Let’s see Paul Allen’s card”.と聞いてチンプンカンプンの私と夫に子供達がそのセリフにまつわるストーリーを教えてくれました。
”Let’s see Paul Allen’s card” は「アメリカンサイコ」で主人公が発した言葉です。
名刺を見せ合って、マウントを取り合うエリートサラリーマンの主人公パトリック・ベイトマンと同僚たち。
パトリック・ベイトマンが “Let’s see Paul Allen’s card (ポール・アレンの名刺をみてみよう)”と言い、ポール・アレンの名刺をみます。
アレンに嫉妬心を抱いているベイトマンは、アレンの洗練された名刺をみて敗北感を感じます。
下にこのシーンの動画を貼りましたが、動画をみてもわかるように、彼らがマウントを取り合っている名刺は普通の人からみるとどれも差がなく、何を競っているのかよくわかりません^^;
このシーンは英語圏では有名なようで、「Let’s see Paul Allen’s card」でググると、様々な情報がでてきます。
Quoraに「アメリカンサイコの ”Let’s see Paul Allen’s card” の台詞はどんな意味をもっているの?」という質問があり、それに対して、下のような回答がありました。
Patrick examines Allen’s card, and gets jealous when it’s supposedly “better” than his, even though they’re virtually the same (along with Van Patten and Bryce). He goes into such detail that it’s funny how serious he is over something as trivial as business cards. Just goes to show the extent of the materialism and the need for status shown in Patrick’s character as well as the society around him.
パトリックは、アレンの名刺が他のものとほぼ同じであるにも関わらず、アレンの名刺が「良い」名刺であると嫉妬します。名刺のような些細なものに、これほどまでに真剣になるのはおかしいと思うほど、彼は詳細に名刺をチェックします。このシーンは、パトリックの人格や彼の周囲の社会における物質主義の広がりとステータスの必要性を示しています。
タワマン文学におけるマウンティングも、このシーンと同じで、関係ない人にはどうでもよいことであり、そして彼らがマウンティングするのは、彼らが物質主義とステータスに縛られているからでしょう。
アメリカンサイコは1980年代の物質主義全盛期を舞台にした作品なので、作品内に物質主義が示されるのはわかりますが、物質主義から脱する傾向がある今の時代に、物質主義にとらわれた人たちの日常を描くのはどうなんだろうと思いましたが、あえて時代遅れの価値観を描くことに、タワマン文学の滑稽さがあり、読む人はそれを面白いと思うのかもしれません。
最後に
この小説(?)、最後の章はなかなかよい話で終わっていました!
長男は「チープな物語」と酷評していましたが。
最後に、”Let’s see Paul Allen’s card”のシーンを紹介します。
Amazon Prime Videoでこの映画を見ることができます。